バイオCDMO業界の動向

最近、富士フイルムやAGCといった日本企業がバイオCDMOに力をいれていますね。そこで「バイオCDMO」業界について解説します。

バイオCDMOとは

バイオ医薬品の生産プロセスの開発受託および製造受託を行う事業を行っている組織を「 バイオCDMO 」と呼びます。CDMOはContract Development & Manufacturing Organizationの略です。

日本企業が多いの?

バイオCDMOに力を入れている日本企業としては富士フイルム、AGC、JSR、三菱ガス化学が有名です。欧米のベンチャー企業が バイオCDMOの企業としては多い印象でしたが、そうした企業を買収を通じて日本企業もバイオCDMOに力を入れてきました。

富士フイルム

富士フイルムは日本企業ではバイオCDMOのシェアがトップです。メルクから買収したMSD Biologics (イギリス) とDiosynth RTP(アメリカ)を母体としてスタートし、インフルエンザワクチンといったワクチン用のバイオCDMOが得意な「Kalon Biotherapeutics」や大量生産設備を保有している「Biogen (Denmark) Manufacturing ApS」の買収を通じて成長してきました。

また、バイオCDMOは病院ではなくバイオ製薬会社が顧客ということで営業先がヘルスケア機器などとは違うことから三菱商事と営業・マーケティングについては提携をしていることも特徴です。

AGC

富士フイルムよりも5年ほど遅れて本格参入しましたが、微生物を利用した生産が得意な「Biomeva GmbH」や動物細胞と微生物の両方で生産できる「CMCバイオロジクス」、新型コロナウィルスのワクチンで日本でも有名になったアストラゼネカのアメリカ工場、イタリアの遺伝子・細胞治療用バイオCDMOの「Molecular Medicine S.p.A.」、 ノバルティスの遺伝子・細胞治療用バイオ薬用アメリカ工場を矢継ぎ早に買収しました。微生物を用いたバイオCDMO・動物細胞を用いたバイオCDMO・ 遺伝子・細胞治療用バイオCDMOの3つの分野を全てカバーする会社となっております。

JSR

JSRもKBI BiopharmaとSelexis SAを買収してバイオCDMOビジネスに参入しています。ただ、JSRは前臨床・臨床向けが得意な分野で、プラントも臨床向けバイオ原薬の製造設備までにとどまっているようです。従って、富士フイルムやAGCとは戦略が異なり、上市後のバイオ製薬の量産はやるつもりはないようです。

バイオCDMOのランキング

バイオCDMOの売り上げ高を個別に開示している企業がほとんどないため売上高での比較は困難です。そのため、製造キャパシティでシェアを推定する方法が一般的です。ただし、この方法は必ずしも売上高に比例しないため目安として考えてください。

製造キャパシティ のランキングは下表の通りです。

富士フイルムが2019年段階では 製造キャパシティランキングで世界4位となっています。

なお、売上高では富士フイルムが2021年に1000億円、AGCが2023年に1000億円に達する見込みとしています。

参考資料

富士フイルム投資家向け資料

AGC投資家向け資料

JSR投資家向け資料

経済産業省資料